背景
私たちは、生活・文化・思想・統治機構などを含む社会の在り方すべてが、大きく変わらざるを得ない、大きな時代のうねりの節目を生きています。
このような転換期には、社会はしばしば不安定化し、不安になった人々は分かりやすい答えを求めがちです。そして、この不安定化の恐れに対し、社会としてしっかりした抵抗力を付け、より明るい未来に向けた展望の光を灯せるのがアートの力だと信じています。
アートの力
まず、アートには「今の社会の何がおかしいと感じるのか」「何が私たちを不安にさせるのか」を、既存の思考のフレームワークにとらわれず、直観的に感じ、表現し、考えさせる力があります。
このような力は「当たり前」を揺さぶるので、しばしば「分かりにくい」ものになりがちです。しかし、人々が安易な分かりやすさを求める時代には、逆に分かりにくい多義性や、曖昧さに留まる事も肝要です。
そして、他人への共感や、複雑なものの前で立ち止まり、耳を澄ませて知覚して深める力も大切です。そのような姿勢を育むためには、見えないものを見て、聞こえないものを聴き、言葉にならないものを表現するアートの力が大変有効だと考えます。
また、アートには生への衝動を活性化させ、人を突き動かす力もあります。
知的論理的活動は「どちらに進むか?」の方向性決定に主に貢献しますが、アートの情動活動は「そもそも進みたいと思うこと」の原動力に貢献します。私たちが、未曽有の変化を乗り切り、希望の光を灯し続けようとするのであれば、そこにはアートの感情を喚起する力が必ず必要です。
追求するアートの定義
私たちが追求したいアートは、「感性」と「社会性」の間で揺れ動くアートです。
社会に対する課題意識から切り離されているものではなく、また、単なる知的概念的活動を超えて感性に訴えかけてくるもの。社会の在り方への直観的な把握と、人を動かす情動性の両方の要素を兼ね備えているアート。
「社会性」と「感性」のグラデーションの中で、形式、創作者と鑑賞者の関係を含んだ、さまざまなアートの在り方を模索し、社会にうねりを作る。そのようなアートを追求したいと思います。
目指す世界
私たちは、アート活動を通して社会をかき混ぜていきます。見えないものを見て、聴こえないものを聴き、言葉にならないものを語り合う習慣を、世の中に広めていきたいと思います。そして、最適化、効率化が求められがちな世の中で、世界の曖昧さと多義性に向き合っていきます。
私たちは、この活動を通してアートをもっと社会に開き、社会とアートをつないでいきます。それにより、時間はかかりますが、さらに豊かな世界をつくりたいと思います。